新潟県新潟市・下越地域にある【浄土真宗本願寺派 太子山 明誓寺】です。
当ブログ『仏事のイロハ』では、葬儀や法事、ご供養に関することや法話などを発信し、仏事に関する基礎知識やよくあるご質問にお答えしながら、現代の暮らしに合った供養のかたちをご紹介してまいります。
「お葬式や法事、何から始めればいいのか迷っている…」「お墓のこと、将来どうしよう…」そんな疑問や不安をお持ちの方にとって、少しでも参考になる情報をお届けできれば幸いです。
何気ないものを・・
五月に入り、あっという間に、大型連休も終わってしまいました。
先月の終わりくらいから、田んぼには水が張られ、連休には、田植えをしていられる姿が、あちらこちらで見られました。
連休返上で作業に励まれた農家の方々のおかげで、今年も新潟には、見慣れた田園の風景が広がっています。
ご門徒の皆さまもそれぞれに、忙しかったり、ほっと一息ついたり、いろいろなお休みを過ごされたことではないでしょうか。
改めまして、皆さまにおかれましては、お念仏相続のことと、心よりお慶び申し上げます。
田んぼに整然と並ぶ小さな苗を見ていると、何でもないような日々の積み重ねが、少しずつ、確かな実りに育っていくのだと感じます。
そのようなことを思いながら境内を歩いていると、ふと目にとまったのは、小さなたんぽぽの花でした。
今年の春は、例年よりも寒暖の差が激しく、桜も慌ただしく咲いては散っていったように思います。
ニュースでも、春なのに雪が降った地域があったと伝えられていました。
つくづく、自然の営みは、私たちの思う通りには進んでくれませんね。
そんな中でも、たんぽぽは冷たい風に揺られながら、地面にしっかりと根を張り、静かに花を咲かせていました。
それを見つけたうちの子共達が、「わあ、まだ咲いてる!」と元気に声を上げました。
境内の隅で、ひとつのたんぽぽに目を輝かせるその姿に、思わずこちらまで笑顔になりました。
大人になると、たんぽぽを見ても「もう種が飛びそうだな」とか、「そろそろ草取りしないと」などと、つい違うことを考えてしまいます。
でも子どもたちは、小さな花にもちゃんと心を寄せ、今ここに咲く命を、まっすぐに受け止めているのです。
そんな子どもたちに、忘れていたものを思い出させてもらった気がしました。
仏教では、すべてが移り変わっていくことを「無常」と説きます。
咲く花も、流れる季節も、今日の私たちの心も、すべては変わり続けています。
だからこそ、今ここにある命を大切に生きることが、何よりも尊いと教えられています。 たんぽぽも、桜も、田植えを終えたばかりの苗たちも、みなそれぞれに、自分の場所で命を育んでいます。
思い通りにいかないことや、うまくできないことがあっても、私たちもまた、与えられた場所で、ちゃんと生きているのです。
仏様は、そんな私たちを、静かに、あたたかく見守り続けてくださっています。
「立派でなくてもいい、失敗してもいい、そのままのあなたを大切に思っていますよ」と、変わらぬぬくもりで包んでくださる存在です。
日々の暮らしの中では、焦ったり、落ち込んだりすることもあるでしょう。
先の見えない日々に不安を抱くこともあるかもしれません。
そんなときは、たんぽぽを見つけた子どもたちのように、小さなものに目を向け、小さな喜びに気づける心を大切にしていきたいものです。
風に揺れる田んぼを眺めながら、空を見上げながら、静かに耳を澄ませてみましょう。
きっと、仏様のぬくもりが、私たちのすぐそばにあることに気づかされるはずです。
どうぞ皆さま、心穏やかに、あたたかな日々をお過ごしください。
